住宅ローン返済中でもできる!個人再生で自宅を守る方法を徹底解説
更新日 2025-05-02
住宅ローンの返済が厳しくなっても、自宅を手放さずに債務整理ができる方法が「個人再生」の「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」です。住宅ローン以外の借金を大幅に減額しつつ、マイホームを守ることができます。
収入減少や予期せぬ支出により、住宅ローンの支払いが限界に近づくと、「家を失ってしまうのではないだろうか」「債務整理で家を売却しないといけないのだろうか」と不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、個人再生と住宅ローンの関係、住宅ローン特則の仕組みについても紹介します。また、住宅ローン返済中に個人再生を利用するメリットやデメリット、注意点も解説していきます。
自宅を手放したくない中、住宅ローン返済に悩んでいる方や個人再生を検討している方は参考にしてみてください。
個人再生と住宅ローンの関係
個人再生には、住宅ローンを例外的に扱える「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という制度があり、自宅を残して借金を整理できます。
個人再生では借金は5分の1から10分の1に圧縮できますが、住宅ローンは住宅ローン特則を利用すれば、整理対象から除外できる制度です。住宅ローンの返済を継続できるため、自宅が処分されません。一方、同じ債務整理の自己破産では、すべての不動産を処分する必要があります。
個人再生の最大の特徴は、全体的な返済負担を減らしながら、住宅ローン特則によって自宅を守れる点です。ただし、住宅ローン特則の利用には要件があるため、事前に要件の確認が必要になるでしょう。
債務整理の一つである「個人再生」とは?
個人再生は、民事再生法に基づいて行われる債務整理手続きの一つです。裁判所へ申し立てし、再生計画の認可決定を受けると、借金が原則として5分の1から10分の1程度(最低100万円)に減額できる制度です。
ここでは、個人再生を利用するための条件と手続きについて説明します。
参考:鹿児島地方裁判所「個人再生手続説明書」
個人再生の利用条件
個人再生を利用するには、複数の条件を満たす必要があります。
主に重要となる利用条件は、以下のとおりです。
- 将来的に安定した収入源がある
- 住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下
このような条件を満たしていれば、会社員だけでなく、自営業者や年金受給者なども個人再生を利用できます。ただし、収入の見込みが立たない場合は、別の債務整理方法を検討する必要があるでしょう。
個人再生の利用手続き
個人再生の手続きは、大きく分けて次のような流れになります。
- 裁判所に個人再生の申し立てを行う
- 申し立てが受理されると、裁判所から再生委員が選任される
- 再生委員とともに再生計画案を作成する
- 債権者集会が開かれ、再生計画案について話し合いが行われる
- 裁判所が再生計画を認可する
- 認可された再生計画に沿って返済を開始する
すべての返済が完了すれば、残りの債務は免除され、経済的に再出発できるようになります。
個人再生の住宅ローン特則で自宅を残す
個人再生の大きな特徴は、住宅ローン返済中の自宅を守るために有効な「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」です。
自宅を手放さないで済むためには、住宅ローン特則が利用できるかどうかが重要です。ここでは、住宅ローン特則を利用できる要件と利用できないケースについて解説します。
個人再生の住宅ローン特則を利用できる要件
要件 | 内容 |
---|---|
借入金の種類 | 住宅の購入またはリフォームのために借りたローン |
対象不動産 | 申立人本人やその家族が実際に居住している自宅 |
担保状況 | 住宅ローン契約に基づく抵当権のみ |
代位弁済があった場合 | 代位弁済後、6ヶ月以内に個人再生の申し立て |
すべて該当すれば、自宅を残したまま個人再生手続きができます。
個人再生の住宅ローン特則を利用できないケース
住宅ローン特則は、次のようなケースでは適用されません。
要件 | 利用できないケース |
---|---|
借入金の種類 | 事業資金や生活資金 |
対象不動産 | 投資用の不動産や別荘など申立人本人が居住していない |
担保状況 |
事業資金のために自宅に抵当権を設定している ペアローンにより夫婦それぞれで抵当権が設定されている |
代位弁済があった場合 | 代位弁済後、6ヶ月以上経過後に個人再生の申し立て |
これらに当てはまる場合は、別の債務整理や任意売却などを検討する必要があります。なお、ペアローンについては、夫婦ともに個人再生する場合は利用できる可能性があるでしょう。
住宅ローン返済中に個人再生するメリット
住宅ローン返済中でも、個人再生の住宅ローン特則を活用すれば自宅を守りながら借金問題の解決が図れます。ここでは、主なメリットを確認していきましょう。
自宅を残しつつ借金の整理ができる
最も重要なのは、自宅を残しながら借金の整理ができる点です。住宅ローン以外の債務を大幅に減額できるため、借入金全体の返済負担が軽減されます。
一括請求されていた住宅ローンを分割払いに戻せる
再生計画を立てると、一括請求になっていた住宅ローンを分割返済に戻してもらえる可能性があります。住宅ローンの返済が滞ると、金融機関から一括返済を求められているケースがあるためです。
住宅ローンの返済期間を延長できる可能性
再生計画の返済期間中は再生計画の実行を優先するために、住宅ローン返済額の減額や利払いのみ、期限延長される可能性があります。
毎月の返済額が減り、家計の負担も軽減されるでしょう。
連帯保証人への影響が抑えられる
個人再生であれば住宅ローンの返済は継続し、連帯保証人へ影響を抑えられます。一方、自己破産では住宅ローンの返済状況に影響を及ぼし、連帯保証人に請求が行くケースが多くあるため、迷惑をかけてしまうでしょう。
住宅ローン返済中に個人再生するデメリット
個人再生には多くのメリットがありますが、複数のデメリットへの理解が欠かせません。主なデメリットについて説明していきます。
住宅ローン自体は減額されない
個人再生で減額されるのは住宅ローン以外の債務だけです。住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンの返済は原則として従来通り続けなければなりません。
引き続き返済していく必要があるため、返済資金を確保する必要があります。
返済負担が重くなる可能性
住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンと個人再生計画による返済を並行して行うかたちになります。収入に対する返済額の割合が高くなりかねません。
個人再生手続き前に住宅ローンの滞納があった場合、滞納していた元本や利息に加え、遅延損害金の返済も必要になるためです。
住宅ローン以外の借金が少ないと効果が限定的
住宅ローン以外の借金が少ないと個人再生では最低弁済額が決まっているため、個人再生の意味が薄れるケースがあります。
例えば、住宅ローンの残債が多いのに対し、カードローンなど他の借金が少ないケースです。
他の借金が120万円とすると、減額後の最低弁済額の計算上は120万円÷5=24万円となり、最低弁済額100万円を下回ります。この場合、適用される金額は100万円となり減額効果は20万円です。
このように個人再生による恩恵が限定的になる可能性があるため、全体の借入状況を確認して効果を把握しておきましょう。
個人再生後の数年間は新規ローンを組めない
個人再生後は、手続き完了から数年間は新規ローンの契約が難しくなります。信用情報機関に個人再生の事実が登録されるため、クレジットカードの作成や新たな借り入れが制限されます。
個人再生する際には、数年間の資金調達が困難になることを考慮して資金計画を検討しておく必要があるでしょう。
手続きが複雑で時間がかかる
個人再生の申し立てから再生計画の認可まで、半年から1年程度かかるケースが一般的です。手続き期間中は、住宅ローンの返済を続けなければならないため、資金計画をしっかり立てる必要があります。
手続き自体も複雑であるため、できるだけ時間をかけたくない場合は専門家への依頼は欠かせないでしょう。
住宅ローン返済中に個人再生を利用する場合の注意点
個人再生は借金問題を解決するためには、十分な理解と準備が必要です。住宅ローン返済中に個人再生を利用する際には、注意しておかなければいけない点が複数あります。
ここでは、それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
手続きが複雑で専門家への相談が必須
個人再生自体の手続きが複雑なため、専門家への相談が欠かせません。申立書類の作成から裁判所とのやり取り、債権者との交渉まで法律の専門知識が求められます。
弁護士や司法書士など、債務整理に詳しい専門家のサポートを受けることで、手続きをスムーズに進められます。
初期相談は無料で対応している事務所も多いため、気軽に相談してみるといいでしょう。
返済計画を守れないと自宅が競売にかけられる危険性
個人再生の住宅ローン特則を利用して残した自宅は、再生計画通りおよび住宅ローンの返済ができなければ、手放す状況になりかねません。返済ができない状況が続くと、自宅は差し押さえられて競売にかけられる可能性があります。
個人再生では、個人再生後も安定した収入を維持し、計画通りの返済を続ける必要があります。再生計画は3〜5年間続くため、期間中の家計管理と返済計画が重要です。
将来の収入が減少するリスクも考慮し、個人再生後も自宅を手放さずに済むよう返済計画を立てましょう。
任意売却という選択肢も検討
個人再生による借金減額後も住宅ローンの返済が難しいと判断される場合は、任意売却という選択肢も検討する価値があります。任意売却とは、債権者の同意を得て不動産を売却する方法です。
自宅を手放さないで借金の整理ができることが目標ではありますが、実現可能性のある返済計画が立たない場合に備えて知っておくべき重要な選択肢です。
任意売却は競売よりも高い価格で売却できる可能性が高く、住宅ローンの残債を効率的に減らせます。債務整理の一環として計画的に実施できると、債務整理後の生活再建がスムーズになるでしょう。
任意売却の詳しい内容を知りたい方は、以下の記事を読んでみてください。
関連記事:任意売却とは?メリット・デメリットや競売との違いをわかりやすく解説!
個人再生で任意売却を再生計画に含める場合の相談は全国任意売却協会へ
住宅ローンの返済が厳しくなったとき、個人再生の住宅ローン特則を利用すれば、家を守りながら借金問題の解決に取り組めます。
住宅ローン特則を利用した個人再生は、複雑な手続きであるため専門家への依頼が欠かせません。個人再生が終結した後の再生計画期間中に返済が滞ったため、競売となり自宅を失ったケースもあります。
再生計画を考えた際の返済計画に無理がある場合は、任意売却を含めることも選択肢の一つです。自宅を手放すことになりますが、再生計画後の生活再建が無理なくできるでしょう。
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