親の家を買うには?住宅ローン審査を通す方法と税金の注意点を解説
更新日 2025-11-27
親の家をリフォームして住む、あるいは親の老後資金のために実家を買い取る。「親子間売買」は一見合理的な選択肢ですが、実は通常の不動産取引よりもハードルが高いことをご存知でしょうか。
銀行の融資審査は非常に厳しく、価格設定を誤ると税務署から「みなし贈与」と指摘されるリスクもあります。
しかし、正しい手順を踏めば、ローンを組んで親の家を買うことは十分に可能です。本記事では、親子間売買にかかる税金や費用の基礎知識から、最も難関である住宅ローン審査を通過するための具体的な対策までを解説します。
親の家を買うメリットとは?相続との違いも比較
親の家を「買う」か、将来「相続する」まで待つか。多くの方が悩むポイントです。まずは、今あえて売買という形をとることのメリットと、相続との違いについて整理しましょう。
親子間売買を選ぶ3つのメリット
あえて売買契約を結び、対価を支払って親の家を取得することには、主に以下の3つのメリットがあります。
- 親の資金確保:売却代金が親の手元に入るため、老後資金や介護施設の入居費用、あるいは借金の返済に充てることができます。
- 自由な活用:所有権が子どもに移るため、親の存命中にリフォームや建て替え、二世帯住宅化などを自分のタイミングで行えます。
- 相続トラブルの回避:生前に売買を行うことで、将来の遺産分割協議で「実家を誰が継ぐか」という兄弟間のトラブルを未然に防げます。
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相続まで待つ場合とどちらが得か
コスト面だけで見ると、売買よりも相続の方が税金や手数料は安く済むケースが一般的です。例えば、名義変更にかかる「登録免許税」や「不動産取得税」は、相続の方が税率が低く設定されているか、非課税になる場合が多いからです。
しかし、「親が今すぐ現金を必要としている」場合や「空き家になる前に住み替えたい」という場合は、コストがかかっても売買を選ぶ価値があります。状況に応じて、税理士などの専門家を交えてシミュレーションすることが重要です。
親の家を買うとかかる税金と費用の注意点
他人から家を買う場合と違い、親子間売買には特有の税務リスクや、使えない控除制度が存在します。ここを理解していないと、後から思わぬ出費が発生する可能性があります。
購入時の諸費用と税金の内訳
親の家を買う際には、物件価格以外に以下のような諸費用がかかります。
- 印紙税:売買契約書に貼付する収入印紙代
- 登録免許税:所有権移転登記にかかる税金(固定資産税評価額の2.0%など ※特例あり)
- 不動産取得税:不動産を取得したことに対してかかる地方税
- 仲介手数料・司法書士報酬:不動産会社や司法書士への依頼費用
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「みなし贈与」のリスクと適正価格
最も注意が必要なのが「みなし贈与」です。これは、形式上は売買であっても、市場価格(時価)よりも著しく低い価格で取引した場合、その差額が「実質的な贈与」とみなされ、贈与税が課される仕組みです。
例えば、時価3,000万円の家を1,000万円で親から買った場合、差額の2,000万円に対して贈与税がかかる可能性があります。親子だからといって安易に価格を決めるのは危険であり、不動産鑑定士や不動産会社の査定に基づいた「適正価格」での取引が必須です。
参考:国税庁「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
親子間売買では住宅ローン控除が対象外
一般的な住宅購入で利用できる「住宅ローン控除(減税)」ですが、生計を一にする親族からの購入には適用されません。
また、売却する親側が利用できる「3,000万円特別控除(居住用財産を譲渡した場合の特例)」も、親子間売買では適用除外となります。これらの控除が使えないことを前提に資金計画を立てる必要があります。
親の家を買う住宅ローン審査が厳しい理由

「親の家を買いたい」と銀行に相談に行くと、多くのケースで難色を示されます。なぜ、親子間売買の住宅ローン審査はこれほど厳しいのでしょうか。
金融機関が融資を断る主な原因
金融機関が最も懸念するのは、「住宅ローンの不正利用」です。過去に、住宅購入を装って低金利の融資を受け、その資金を親の事業資金や借金返済に流用するといった事例があったためです。
また、前述の「みなし贈与」や相続税逃れの疑いがある取引に融資を行うことで、銀行側が税務当局とのトラブルに巻き込まれるリスクも警戒されます。
大手銀行は親族間売買を原則取り扱わない
このような背景から、都市銀行などの大手金融機関の多くは、内規として「親族間売買への融資は原則取り扱わない」という方針をとっています。個人の返済能力(年収など)に問題がなくても、取引の性質だけで門前払いされてしまうことが多いのです。
親子間売買のローン審査を通すための5つの対策
では、親の家をローンで買うことは不可能なのでしょうか?決してそうではありません。適切な金融機関を選び、透明性を確保することで、審査に通る可能性は十分にあります。
対策1:親族間売買に強い地域金融機関を選ぶ
大手銀行が消極的な一方で、地方銀行、信用金庫、信用組合などの地域密着型金融機関は、個別の事情を汲んで審査してくれる可能性があります。また、一部のノンバンクでも取り扱いがあります。最初から「親族間売買に対応しているか」を確認し、複数の金融機関に打診することが重要です。
対策2:不動産会社の査定書で適正価格を証明する
価格の妥当性を証明するために、不動産会社の査定書(できれば複数社のもの)を用意します。「時価での取引である」という客観的な証拠があれば、銀行側の「贈与疑義」や「担保評価割れ」の懸念を払拭しやすくなります。
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対策3:司法書士を入れて契約の透明性を確保する
親子だけで作った契約書ではなく、司法書士や不動産会社などの第三者が作成した正規の「不動産売買契約書」と「重要事項説明書」を用意します。プロを介在させることで、取引の透明性と本気度を銀行にアピールできます。
対策4:購入する合理的な理由と返済計画を示す
「なぜ今、親から買う必要があるのか」を論理的に説明できるようにしましょう。「親が高齢で介護施設に入る資金が必要」「自分が実家に戻って同居する」など、資金使途が明確で、かつ住宅ローンの趣旨(居住用)に合致していることを伝えます。
対策5:自己資金を十分に準備する
審査のハードルが高い親子間売買では、諸費用や頭金として物件価格の2〜3割程度の自己資金を用意できると、審査通過率がグッと高まります。返済能力と計画性を示す強力な材料になります。
親の借金返済のために家を買う場合の解決策
「親が住宅ローンを滞納している」「借金返済のために実家が競売にかかりそう」といった緊急事態で、子どもが家を買い取るケースもあります。この場合、さらに専門的な対応が求められます。
住宅ローン滞納時に子が買い取る「任意売却」
親がローンを払えない場合、そのまま放置すれば家は競売により強制的に売却され、安値で失ってしまいます。これを防ぐために、債権者の合意を得て行う売却方法が「任意売却」です。
任意売却の買主として子どもが名乗りを上げ、住宅ローンを組んで買い取ることができれば、親の借金を清算しつつ、家族はそのまま家に住み続けることができます。これは非常に有効な手段ですが、債権者との価格交渉が必要になるため、任意売却の専門知識が不可欠です。
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リースバックと親子間売買の比較
実家に住み続ける方法として、投資家に家を売って賃貸として住む「リースバック」もあります。しかし、リースバックは家賃が割高になったり、将来的な買い戻しが困難になったりするリスクがあります。
対して親子間売買なら、資産が家族内に残るため、将来的な安心感は大きくなります。可能な限り親子間での解決(親子間売買)を目指し、それが難しい場合にリースバックを検討するのが賢明です。
親の家を買う手続きの流れ
最後に、実際に親の家を買うまでの具体的なステップを確認しておきましょう。
STEP1:親族間の合意形成から売買契約まで
まずは親だけでなく、将来の相続人となる兄弟姉妹全員に話をします。「なぜ特定の子が買うのか」「価格はどうするか」を話し合い、合意を書面に残します。その後、不動産会社の査定を受け、適正価格を決定します。
STEP2:ローン審査から決済・登記完了まで
価格が決まったら、親族間売買に対応した金融機関へ事前審査を申し込みます。審査承認後、司法書士立ち合いのもと売買契約を締結。本審査を経て融資が実行(決済)され、最後に所有権移転登記を行って完了となります。
まとめ:親の家をローンで買うなら実績豊富な専門家へ相談を
親の家をローンで買う「親子間売買」は、法務・税務・金融の専門知識が複雑に絡み合うため、個人だけで進めると「ローンが通らない」「後から多額の贈与税がかかる」といった失敗を招きがちです。
特に、親のローン滞納や借金返済が絡む場合は、時間との勝負になります。一般の不動産会社では対応が難しいケースでも、専門機関であれば解決の道筋が見つかることがあります。
当サイトを運営する一般社団法人 全国任意売却協会では、親子間売買の実績豊富なスタッフが多数在籍しています。
- 住宅ローン審査対策:親族間売買に理解のある金融機関との調整
- 税務リスクの回避:顧問税理士と連携した適正価格のアドバイス
- 親族間の調整:他のご兄弟への説明や権利関係の整理
「自分の年収で買えるのか」「親のために実家を守りたい」など、まずは無料相談で状況をお聞かせください。お客様の状況に合わせて、法律面・金銭面・精神面のすべてを考慮した最適なプランをご提案いたします。
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