育休中に住宅ローンが払えない状況でやるべき対処法とやってはいけない対応
更新日 2025-11-03
「育休に入ってから収入が減ってしまい、住宅ローンの支払いが不安」
「育休中の返済が厳しくなったら、どうすればいいだろうか」
育休を取得できたものの、上記のような悩みがある方は多いのではないでしょうか。共働きしていた奥様が育休になると、世帯全体の収入が下がるため、返済が不安になる方も少なくありません。
返済が厳しくなったときに備えて、正しく対処する知識を持っておくと、焦らずに対応できます。
この記事では、育休中に住宅ローンが払えないときに起こる流れやリスクを解説します。また、今すぐ実践できる4つの対処法を紹介するので、今後の参考にしてみてください。
育休中に住宅ローンの支払いができないとどうなる?
育休中に住宅ローンの支払いが滞ると、金融機関の対応は段階的に進み、最終的には競売となって自宅を失うおそれがあります。
ここでは、住宅ローンの支払いができなくなったときの流れを3段階で解説します。
1.返済が遅延すると金融機関から催促の連絡が来る
返済を滞納してから約3か月目までの流れは、以下のとおりです。
- 金融機関から電話による督促がある
- 延滞が続くと、督促状が郵送される
- さらに放置すると、催告書が内容証明付郵便で届く
催告書には支払い期限や法的手続きの可能性が明記され、より厳しい通知となります。
延滞3か月になる頃には、信用情報に記録が残る可能性もあります。返済が難しいと感じた段階で、早めに金融機関へ相談することが大切です。
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2.期限の利益を喪失し、一括返済を求められる
延滞が6か月目前後になると、「期限の利益」を失う可能性があります。期限の利益とは分割返済できる権利です。金融機関から期限の利益喪失通知が届くと、分割返済ではなく一括返済を求められます。
残高3,000万円を延滞している場合、遅延損害金を含め3,000万円以上の請求となるため、現実的に返済は困難です。
その後、保証会社が代位弁済を行い、債権者が保証会社に移ります。保証会社は回収を厳格に進める傾向があるため、早期対応が重要です。
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3.競売にかけられ自宅を失う
保証会社への返済も滞ると、最終的に担保である自宅が競売にかけられます。競売は裁判所主導の法的手続きで、市場価格よりも低い価格で落札されかねません。
競売開始決定通知が届くと、裁判所がスケジュールを決定し、手続きが進みます。競売で落札された自宅は、速やかに引渡す必要があり、最終的に強制退去させられるケースもあります。
このような事態を防ぐには、早めの行動で返済条件変更や任意売却などの対応を検討することが重要です。
育休中に住宅ローンが払えない場合の4つの対処法
育休中に返済が難しくなっても、すぐに自宅を失うわけではありません。育休中の収入減でも自宅を守るためにできる4つの方法を紹介します。
- 金融機関へ返済条件変更を相談する
- 公的制度や金融機関独自の制度を利用する
- 家計の見直しをする
- 任意売却を検討する
それぞれの対処法を具体的に見ていきましょう。
金融機関へ返済条件変更を相談する
返済が厳しいと感じたら、借入先である金融機関への相談が最優先です。金融機関は状況に応じて返済条件の変更(リスケジュール)に応じてくれる場合があります。
主なリスケジュールの方法は、以下のとおりです。
- 期間限定の減額返済
- 期間限定の元金据え置き
- 返済期間延長による月額返済額の軽減
早期の相談ほど選択肢は広がるため、延滞を放置せず、現状を正確に伝えましょう。
公的制度や金融機関独自の制度を利用する
育児中の家庭を支援するため、公的制度や金融機関ごとの独自制度の活用も効果的です。主な制度を表にまとめました。
| 銀行名 | プラン名・特典 | 優遇内容 |
|---|---|---|
| 三井住友銀行 | ライフイベントサポートプラン | 出産後の一定期間、金利を優遇 |
| みずほ銀行 | 子育て応援サービス | 出産後の一定期間、金利を優遇 |
| 三井住友信託銀行 | ベびサポ | 出産後の一定期間、金利を優遇 |
| 三菱UFJ銀行 | 女性向け特典 | 出産後の一定期間、金利を優遇 |
| 住宅金融支援機構 | 【フラット35】子育てプラス | 子どもの人数に応じて金利が引き下げ |
詳細な条件や優遇内容は、金融機関によって異なるため、契約先の金融機関公式サイトを確認してみましょう。
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家計の見直しをする
返済条件の見直しと同時に、家計の見直しも欠かせません。育休中は収入が減る一方で、子ども用品や医療費など支出が増える傾向にあります。
通信費や保険・サブスクなどの固定費を整理し、優先順位を明確にして、不要な支出を減らしましょう。
家計の全体像を見直したい場合、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談して専門的なアドバイスを受けるのも有効です。
任意売却を検討する
どうしても返済のめどが立たない場合は、任意売却を検討しましょう。任意売却とは、すべての債権者から同意を得て、市場価格に近い金額で自宅を売却する方法です。
競売との主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格の8〜9割 | 市場価格の7〜8割 |
| 売却後の残債 | 分割返済の交渉可能 | 一括請求 |
| 転居時期 | 交渉可能 | 強制退去 |
自宅を手放してしまいますが、家計再建に向けた前向きな選択です。また、専門的な知識を必要とするので、任意売却の専門家や任意売却の実績がある不動産会社を相談先に選びましょう。
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住宅ローンが支払えないときにやってはいけない2つのこと
返済が厳しくなると、焦って間違った判断をしてしまいがちです。誤った対応は状況を悪化させる原因にもなります。
ここでは、住宅ローンが払えないときに絶対に避けるべき2つの行動を紹介します。
無断で支払いを滞納する
すぐに返済できると思うからと連絡せずに放置するのは危険です。返済を無断で滞納すると、金融機関は返済の返済の意思がないと判断し、督促から回収へと方針を切り替えるおそれがあります。
信用情報機関に金融事故として記録が残り、将来の教育ローンや自動車ローンなどの審査に影響しかねません。
住宅ローン返済を滞納してしまったらすぐに金融機関へ連絡し、現状を正直に伝えましょう。
他のカードローンなどでお金を借りる
住宅ローンの返済資金を一時的に補うために、カードローンやキャッシングを利用するのは避けましょう。これらの借入は金利が高く、返済負担が増えるだけです。
一時的に延滞を回避しても、借入本数が増えれば返済負担が重くなり、家計を圧迫する原因になります。
また、他の金融機関での借入が多いと金融機関への相談時に「返済能力が低い」と見なされかねません。新たな借入で対応せず、まずは金融機関やFPなどの専門家に相談しましょう。
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育休中の住宅ローン返済で気をつけておきたいこと3選
育休中に住宅ローンを抱える人が注意したいポイントは、次の3つです。
- 住宅ローン控除の還付額が減る
- 育児休業給付金の支給額が途中から減る
- 育児にかかる支出を考慮する必要がある
それぞれの仕組みを正しく理解しましょう。
住宅ローン控除の還付額が減る
住宅ローン控除は、所得税や住民税の一部が戻る制度です。ただし、所得が減ると控除額も減少します。
育休中は給与が下がり、代わりに受け取る「育児休業給付金」は非課税のため、納税額自体が少なくなります。
結果として所得税や住民税が減少するため、控除の効果を十分に得られません。前年より還付額が減るケースもあり得ます。
育休中も前年と同様の還付額を期待すると、家計の見通しが狂う可能性があるため注意しましょう。
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育児休業給付金の支給額が途中から減る
育児休業給付金は、育休開始から6か月間は「休業前賃金の67%」が支給されますが、7か月目以降は「50%」に下がります。
この仕組みを理解せずに返済計画を立てると、育休後半に支払いが厳しくなりかねません。
給付金の支給額や期間は雇用保険の条件によって異なるため、早めに勤務先やハローワークで確認しておきましょう。
育児にかかる支出を考慮する必要がある
育休後は、育児関連の支出が確実に増えていきます。主な支出は次のとおりです。
- おむつ
- ミルク代
- 衣類
- 医療費
- 保育園準備
- 習い事
子どもの成長とともに費用は増加します。家計に余裕がない状態で無理に返済を続けると、家計の圧迫につながるでしょう。
育児にかかる支出を考慮したライフプランを考え、将来的な支出を見据えて返済計画を立てておくことが大切です。
育休中の住宅ローンに関するよくある質問
育休中の住宅ローンについて、多くの疑問を持つ方がいます。ここでは、特に相談の多い2つの質問を紹介します。
育休中の住宅ローン返済は待ってもらえる?
原則として、育休中を理由に返済を止めてもらうことはできません。ただし、金融機関へ事前に相談すれば、返済期間の延長や一定期間の元金据え置きなど、返済条件を柔軟に見直してもらえる場合があります。
育休中に住宅ローンは組める?
育休中でも住宅ローンは組めますが、審査は通常より厳しくなる傾向傾向があります。金融機関は、育休前の収入や勤続年数、復職予定の確実性などを重視して判断します。育休証明書や在職証明書を用意し、復職後の収入見込みを示すことが大切です。
まとめ:まずは早めにご相談を
育休中は誰でも収入が減る時期であるため、返済が厳しくなっても、焦らずに行動すれば家を守れる可能性があります。金融機関へ早めに相談し、リスケジュールによる返済額の調整ができないかを確認しましょう。
返済の見通しが立たない場合は、任意売却という選択肢もあります。競売よりも高く売却でき、残債の分割返済も交渉できるため、家計再建に有効です。
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