住宅ローンが払えないとどうなる?対処法とやってはいけないこと
更新日 2025-02-25

住宅ローンが払えなくなった場合、どのような状況になるのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
予期せぬ収入の減少や支出の増加、家庭環境の変化などによって、返済が困難になるケースは珍しくありません。
住宅ローンが払えないときの対処法として、金融機関への相談、借り換え、売却などが挙げられますが、それぞれ特徴が異なるため、事前に内容を把握して適切な方法を選ぶことが大切です。
また、売却方法に関しても、任意売却や売却後も住み続けられるリースバックといった選択肢があります。
本記事では、住宅ローンが払えない場合に直面する状況や対処法について解説します。特に住宅ローンの返済に不安を感じている方は、参考にしてください。
住宅ローンを払えない人の割合
住宅金融支援機構のデータによると、令和5年度における住宅ローンを払えない人の割合(リスク管理債権)は3.04%でした。リスク管理債権とは、住宅ローン返済が滞り回収できなくなった債権のことを指します。
また、近年のリスク管理債権の推移は以下のとおりです。
年 | リスク管理債権 |
---|---|
平成22年度 | 8.48% |
平成24年度 | 7.47% |
平成26年度 | 5.87% |
平成28年度 | 4.52% |
平成30年度 | 3.49% |
令和2年度 | 3.32% |
令和3年度 | 3.17% |
令和4年度 | 3.05% |
令和5年度 | 3.04% |
上記のとおり、リスク管理債権は近年減少傾向にあります。しかし、現在でも約3%以上を記録しており、およそ100人中3人が住宅ローンの返済に行き詰まっていることがわかります。
また、これらのデータは住宅金融支援機構の利用者を対象としているため、民間の金融機関の利用者を含めると、さらに増える可能性もあります。
住宅ローンが払えない理由・原因
住宅ローンが払えない理由としてよくあるのが下記の3つです。住宅ローンが払えなくなってしまった方は、多くの場合、これらの理由に1つ以上当てはまります。
- 収入減
- 支出の増加
- 離婚
ここでは、住宅ローンが払えない3つの理由や原因についてそれぞれ説明します。
1.収入減
住宅ローンが払えなくなる原因の一つが、収入の減少です。
住宅ローンを組んだ当初は十分な収入があったとしても、何らかの理由で収入が減り、住宅ローンの返済が困難になることがあります。
例えば、収入が減少する理由として、次のようなケースが挙げられます。
- 正社員の共働きだったが、子育てや体調の影響で妻がパート勤務に変更した
- 会社の経営悪化に伴い、給与が大幅に減額された
- 病気のため働き続けることが難しくなった
- コロナ禍で収入が減り、その後も回復していない
- 転職で収入が大幅に減少した
特に、返済負担率(収入に対する住宅ローン返済額の割合)が高いと、収入がわずかに減少しただけでも返済が厳しくなる可能性があります。
一般的に、返済負担率は25〜35%以内が目安とされています。例えば、住宅金融支援機構フラット35の審査においても、返済負担率の基準は最大でも35%以下です。
また、ボーナス払いを設定していて、勤務先の経営状況が悪化してボーナスが支給されなくなった場合も返済が厳しくなります。
参照:年収による借入額などの制限はありますか。 – フラット35
2.支出の増加
二つ目に多い要因が支出の増加です。収入が変わらなくても、支出が増えることで家計に余裕がなくなり、住宅ローンの返済が困難になるケースもあります。
例えば、支出が増える理由として、次のようなケースが挙げられます。
- 親の介護が必要になり介護費用がかかる
- 子どもが私立に進学して予想以上の教育費がかかる
- 変動金利の上昇で住宅ローンの返済額が増える
- 病気による治療費が家計を圧迫する
人生は計画どおりに進まないことが多く、想定外の支出が発生することは珍しくありません。ただし、支出の増加が当初の計画を上回ると、住宅ローンの返済が難しくなる場合があります。
3.離婚
離婚が原因で住宅ローンの返済が難しくなることもあります。
例えば、以下のようなケースが挙げられます。
- 共働きでの返済を前提としていたが、離婚により収入が減少して返済が困難になる
- 離婚後に養育費の負担が加わり、ローン返済が滞ってしまう
厚生労働省の「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況」によると、婚姻件数が59万9007件に対し、離婚件数は20万8496件で「約3組に1組が離婚する」と言われる時代です。
住宅ローンは返済期間が長いため、夫婦が共に完済を迎えられないケースも少なくありません。
参照:令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省
住宅ローンを滞納するとどうなるのか?
住宅ローンを滞納すると、金融機関から一括返済を求められ、難しい場合には競売にかけられる可能性があります。
競売になると、自宅が相場より大幅に安く売却されるため、売却後も住宅ローンが残る可能性が高いです。
また、競売の情報は公にされるため、周囲に住宅ローンの滞納や競売の事実が知られる可能性もあるので注意が必要です。
競売の手続きは裁判所主導で進むため、自宅は債務者の意思に関係なく売却され、出ていかない場合には強制的に退去を命じられることもあります。
ここでは、住宅ローンを滞納した際の流れや、競売にかけられた場合のデメリットについて紹介します。
住宅ローンを滞納した後の流れ
住宅ローンを滞納した後の流れは、次のとおりです。

- 督促状が届く
- 住宅ローンの一括返済を求められる
- 自宅が差し押さえられる
- 競売にかけられる
- 強制退去となる
まず、住宅ローンを滞納して2〜3ヶ月が経過すると督促状が届きます。その後も返済が難しく滞納から6か月以上が経過すると、期限の利益を喪失し、金融機関から住宅ローン残債の一括返済を求められます。
また、保証会社が滞納分を肩代わりして金融機関に支払う(代位弁済)と、その後の債権者は保証会社に変わり、債務者は保証会社への返済が必要となります。
債権者が裁判所に競売を申し立てると、自宅が差し押さえられ、競売にかけられます。競売で落札されると、新しい所有者が決まり、債務者は家を明け渡さなければなりません。 出ていかない場合は、強制退去を命じられることもあります。 自宅が競売にかけられた場合のデメリットは、次のとおりです。 競売物件は、内覧ができない、検討期間が短いなど、買主にとって不利な条件が多いため、通常の売却価格よりも3〜5割程度低い価格で取引されることが一般的です。 売却代金で住宅ローンを完済できない場合、残りは別の方法で返済する必要があります。 また、競売物件は物件情報が「不動産競売物件情報サイト(BIT)」や官報(国が発行する機関紙)に掲載され、鑑定士が評価のために出入りするので、競売にかけられたことが周囲に知られやすいというリスクがあります。 新たな所有者が決まった後は、一定期間の猶予があるものの、家を出ない場合は強制退去を余儀なくされる可能性もあるため注意が必要です。 競売の申立ては債権者によって行われますが、競売が決定すると手続きは裁判所主導で進行し、債務者の意向は基本的に反映されません。 このように、競売は債務者にとってデメリットが多い制度です。 ご相談は全国から無料で受付中! 住宅ローンが払えないときの対処法として、金融機関への相談、住宅ローンの借り換え、売却などがあります。 それぞれの対処法で特徴が異なるため、事前に把握して、検討できる方法があれば積極的に動くことが大切です。 ここでは、住宅ローンが払えないときの対処法について説明します。 住宅ローンが支払えない場合の対処法の一つとして、銀行に返済条件の変更を相談する方法があります。返済期間の延長や一定期間の利息のみ支払いなどを提案して、返済しやすい状況をつくることが目的です。 例えば、住宅金融支援機構では返済期間の延長や一定期間の返済額の減額、ボーナス返済分の変更や取りやめなどの対応が可能です。 住宅金融支援機構「統合報告書2023」によると、コロナ禍では住宅ローン返済方法の変更が、1万8541件承認されています。 相談すれば必ず承認されるわけではありませんが、まずは相談することが大事です。 住宅ローンの借り換えを検討することも、対処法の一つです。 現在よりも低い金利の住宅ローンに借り換えることで、毎月の返済額が減り、現在の状況を改善できる可能性があります。 ただし、借り換えで大きなメリットを得るためには、一般的に以下のような条件が必要と言われています。 また、借り換えは審査を通過しなければ利用できません。さらに、諸費用がかかるため、初期費用も考慮して検討する必要があります。 家を売却することも、住宅ローンが払えないときの対処法の一つです。売却代金で住宅ローンを完済できれば、返済の負担から解放されます。 しかし、売却代金でローンを全額返済できず、残債の返済目処が立たない場合は、差し押さえや競売にかけられるリスクがあるため注意が必要です。 売却方法によっては、家を売却した後も引き続き住み続けられる場合があります。また、任意売却など競売以外の方法を選ぶことで、より高値での売却が期待できます。 住宅ローンが払えないときの売却方法としては、下記の3つの方法があります。 それぞれの売却方法で特徴が異なるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。 ここでは、住宅ローンが払えないときの3つの売却方法について説明します。 任意売却は、住宅ローンを滞納して競売にかけられる前に、債権者や連帯保証人の同意を得て物件を売却する方法です。 任意売却を行うことで、競売を回避することが可能です。 一般的な不動産売却と同じ手順で進められるため、住宅ローン滞納が周囲に知られるリスクが低く抑えられます。また、市場価格とほぼ変わらない金額で売却できるため、競売より高値で売れる可能性が高く、住宅ローンを完済できる見込みも高まります。 ただし、任意売却は競売の開札日までにすべての手続きを完了させる必要があり、スピードが求められる点には注意が必要です。 また、債権者や連帯保証人の同意が得られなければ、任意売却を進めることはできません。 リースバックとは、自宅を不動産会社に売却した後、賃貸契約を結んで元の自宅に住み続ける制度です。売却によって得た資金を手元に確保しつつ、住み慣れた家で生活を続けられる点が特徴です。 賃貸となることで固定資産税の負担がなくなり、将来的に引っ越しを検討する際も動きやすくなります。 ただし、すべての不動産会社がリースバックに対応しているわけではない点には注意が必要です。 参照:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」 自宅を親族間で売買する方法もあります。 親族間売買の場合、買主を探す手間が省けて、比較的安心して売却を進められることが特徴です。 また、売却した後も親族が許可すれば、賃貸契約を結んで、自宅に住み続けることができます。親族間での売買となるため、物件情報が外部に出ることがなく、住宅ローン返済が厳しい状況を周囲に知られる心配もありません。 ただし、住宅ローンの審査が厳しく、相場より低い価格で売却した場合、みなし贈与に該当する可能性があるため注意が必要です。その場合は、贈与税が課されることがあります。 参照:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁 ご相談は全国から無料で受付中! 最後に、住宅ローンが払えないとこにやってはいけないことを紹介します。住宅ローンが払えない場合、次のことは必ず避けましょう。 金融機関からの連絡を無視すると、信頼を失い、その後の交渉や相談に応じてもらえなくなる可能性が高くなります。また、カードローンやキャッシングなどで新たに借り入れをしても、根本的な解決には繋がらず、かえって状況を悪化させてしまうだけです。 夜逃げをしても、差し押さえや競売は避けられません。近隣住民や友人、勤務先、金融機関に迷惑をかけ、信用情報にも傷が残ります。どうしても返済できない場合は、自己破産といった選択肢もあるため、専門家に相談することをおすすめします。 住宅ローンの返済が難しい場合は、金融機関や専門家、不動産会社にできるだけ早く相談することが大切です。 しっかりと事情を説明することで、返済方法の変更など解決策を提案してもらえる可能性があります。金融機関からの連絡を無視したり、新たな借り入れや夜逃げをしたりすることは、状況がさらに悪化するため絶対に避けましょう。 また、競売を避ける方法として、任意売却を検討することも選択肢の一つです。 現在住宅ローンの返済が厳しい、もしくは払えなくなっている場合は、まずは一度ご相談ください。競売にかけられた場合のデメリット
住宅ローンが払えないときの対処法
金融機関に相談する(リスケジュール)
住宅ローンの借り換えを検討する
家の売却を検討する
住宅ローンが払えないときの売却方法
任意売却
リースバック
親族間売買
住宅ローンを払えないときにやってはいけないこと
まずはご相談ください