競売開始決定通知とは?届いた後の流れと回避策を専門家が解説
更新日 2025-12-26
競売開始決定通知とは、住宅ローンの滞納などが原因で債権者が裁判所に申し立てを行い、裁判所が「あなたの家を競売にかけます」と正式に決定したことを知らせる通知書です。
見慣れない通知書を裁判所より受け取り、「競売開始決定通知が届いたら、すぐに出ていかないといけないのか」と不安になってしまう人は多いでしょう。結論から言うと、この通知が届いても、すぐに家を追い出されるわけではありません。
しかし、放置すれば確実に家を失います。重要なのは通知を無視せずに、競売を回避するための「任意売却」に取り組むことです。
この記事では、競売開始決定通知の意味や今後のスケジュール、そして競売を回避する有効な手段である「任意売却」について詳しく解説します。
競売開始決定通知とは?届く理由と意味
あらためて解説すると、競売開始決定通知とは、裁判所が自宅を競売にかける手続き(差し押さえ)を正式に受理したことを債務者(あなた)に知らせるための書類です。
ここでは、この通知がどのような法的意味を持ち、なぜ届くのかについて詳しく見ていきましょう。
債権者による競売手続きの申し立て
競売開始決定通知が届く直接的な理由は、銀行などの債権者が裁判所に対し、競売手続きを申し立てたためです。
滞納が続く住宅ローンを回収するために、担保不動産である自宅を強制的に売却する動きを意味します。
これまでに届いた督促状や催告書、あるいは期限の利益喪失による一括請求でも解決に至らなかったため、債権者が最終手段である競売へと移行したといえるでしょう。つまり、話し合いの段階は終わり、強制的な回収フェーズに入ったことを示しています。
裁判所による競売手続きおよび法的な差し押さえの決定
競売開始決定通知は、裁判所が債権者の申し立てを認め、不動産を法的に差し押さえたことを決定した通知でもあります。この決定により法的な効力が発生し、所有者は勝手に自宅を売却したり、名義を変更したりすることが禁じられます。
しかし、現時点での所有権はまだ債務者にあります。そのため、直ちに退去を求められるわけではありません。競売によって落札者が決まり、代金が納付されるまでは、これまで通り家に住み続けることが可能です。
競売開始決定通知を無視した場合の3つのリスク
競売開始決定通知を無視して何も対策を講じないと、競売手続きは自動的に進んでしまいます。通知を放置した場合に起こりうる主要なリスクは、次の3つです。
- 市場価格より大幅に安く売却される
- 残債を一括請求され、給与なども差し押さえられる
- 官報やインターネット上で情報が公開される
それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
市場価格より大幅に安く売却される
競売での落札価格は、一般市場価格の約5〜6割程度まで下がる傾向にあります。裁判所が売却を成立させるために算出する売却基準価額が、あらかじめ低く設定されるためです。
また、次の点も価格が下がる要因となります。
- 購入検討者が事前に室内を内覧できないリスクがある
- 購入後のトラブル(残留物や立ち退き)に対する保証がない
このように競売ならではの厳しい条件が影響し、高値での売却は期待できません。
残債を一括請求され、給与なども差し押さえられる
競売で安く売却された結果、住宅ローンは完済できずに多額の借金が残るケースが多い傾向です。残債については債権者から一括返済を迫られ、返済に応じられない場合は、次の回収方法へ発展する可能性があります。
- 勤務先からの給与の差し押さえ
- 銀行預金の差し押さえ
- 連帯保証人への一括請求
これにより、保証人との関係が悪化したり、手取り収入が減って生活再建が困難になったりするリスクが生じるでしょう。
官報やインターネット上で情報が公開される
入札の準備が整うと、物件情報が公開されます。主な公開先は、以下のとおりです。
- 裁判所内の掲示板
- 官報(国の広報誌)
- 不動産競売物件情報サイト(BIT)
インターネット上に掲載されると、物件の住所や外観、室内の写真などが誰でも閲覧できる状態になり、プライバシーが保護されません。その結果、近隣住民や職場の人に、自宅が競売にかけられている事実が知れ渡ってしまう可能性が高くなるでしょう。
競売開始決定通知が届いた後の流れと期間
競売開始決定通知が届いた後の主な流れは、以下のとおりです。
- 執行官による現況調査の実施
- 期間入札の開始から開札
- 落札者への所有権移転による強制退去
それぞれの内容を見ていきましょう。
より詳細な競売のスケジュールについては、以下の記事で解説しています。
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1.執行官による現況調査の実施
競売開始決定通知の到着から約1〜2ヶ月以内に、裁判所の執行官と不動産鑑定士などが自宅を訪問し、「現況調査」が行われます。これは物件の価値を算定するための重要な手続きです。
留守や居留守を使っても現況調査を拒否することはできません。状況によっては、執行官の権限で鍵を開けて入室し、調査が実施されます。執行官には、鍵の業者を帯同して強制的に解錠する法的権限が与えられているのです。室内写真も撮影され、後に公開されることになります。
2.期間入札の開始から開札
現況調査の後、入札(購入希望者の募集)が始まる期間と、開札日(結果発表日)が決まったことを知らせる「期間入札の通知」が届きます。
入札期間になると、裁判所の掲示場やインターネット(BIT)で物件情報が一般公開されます。入札期間が終了すると「開札」が行われ、最も高い金額を入札した人が「落札者」として決定するのです。この段階まで来ると、もはや競売を止めることは非常に困難になります。
3.落札者への所有権移転による強制退去
開札後、裁判所が手続きに問題がないかを確認し、「売却許可決定」を出します。落札者が代金を納付した時点で、所有権は正式に落札者へと移転します。
所有権が移った時点で、元の所有者は不法占拠の状態となるため、原則として明け渡しが必要です。話し合いによる退去に応じない場合は「引渡命令」が出され、最終的には「強制執行」によって、強制的に荷物の搬出や鍵の交換が行われます。
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競売開始決定通知後でも間に合う「任意売却」
競売開始決定通知が届いた後でも、競売を避ける有効な手段が「任意売却」です。具体的な仕組みとメリットは、以下の3点です。
- すべての債権者から合意を得て一般市場で売却できる
- 市場価格に近い売却で残債を圧縮できる
- 売却後の支払いや引越し費用、退去時期を交渉できる
それぞれの内容を見ていきましょう。
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すべての債権者から合意を得て一般市場で売却できる
競売の手続きが進んでいる最中でも、債権者の合意があれば、並行して不動産市場での売却活動が可能です。ただし、売却活動中も競売の手続き自体が止まるわけではありません。
「開札期日の前日」というタイムリミットまでに買い手を見つけ、手続き完了が必要です。
また、複数の債権者がいる場合は、全員の同意が必須となる点に注意しましょう。
市場価格に近い売却で残債を圧縮できる
競売による入札方式ではなく通常の不動産取引として扱うため、市場相場に近い価格で売却できる可能性が高まります。高く売れればその分多くのローンを返済でき、売却後に残る借金を大幅に減らせます。
売却後のローン残債が圧縮できるため、生活再建への経済的負担が軽くなるでしょう。ただし、入札期日までに成約させる必要があり、早期売却を目指して市場価格の7〜8割程度の価格設定になるケースが一般的です。
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売却後の支払いや引越し費用、退去時期を交渉できる
債権者との交渉次第で、売却後の柔軟な対応が期待できるのも大きなメリットです。具体的には、以下のとおりです。
- 引っ越し代を売却代金から控除できる可能性がある
- 住宅ローンの残債を分割返済できる
- 退去時期をこちらの都合に合わせて調整できる
競売では対応が困難な面において、生活再建に向けた前向きな条件を引き出せる点が強みです。
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競売と任意売却の違い
競売と任意売却では、金銭的なメリットだけでなく、プライバシーや売却後の生活再建のしやすさに大きな差が出ます。主な違いを比較表にまとめました。
| 項目 | 競売 | 任意売却 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場の5〜6割 | 市場価格の7〜8割 |
| プライバシー | なし | あり |
| 引越し費用 | なし | 交渉により捻出可能 |
| 残債の返済 | 一括請求 | 分割返済の交渉可能 |
任意売却は、競売に比べて多くの面で有利な条件を引き出せる可能性が高いことがわかります。
任意売却と競売の違いを以下の記事で詳しく解説しています。
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競売開始決定通知からいつまでなら間に合う?
競売開始決定通知を受け取った後の手続きは待ってくれません。任意売却を成功させるには、決められた期限内に行動する必要があります。
ここでは、任意売却へ切り替えることができる具体的な期限について解説します。
法律上は入札期日の前日まで
法律上の期限は「開札期日の前日」です。この日までに債権者が裁判所に対して競売の申し立てを取り下げれば、手続きはストップします。
しかし、あくまで理論上のギリギリの期限にすぎません。直前になって慌てて動いても、買い手が見つかり決済まで段取りができなければ取り下げは認められないため、実際にはもっと早い段階での行動が必要です。
実務上の目安は期間入札通知の到着前まで
実務的な成功の目安は「期間入札の通知」が届く前までです。任意売却を成立させるには、以下のプロセスが必要になります。
- 査定
- 販売活動
- 買主の決定
- 債権者との交渉
- 契約
通常3〜6ヶ月程度の期間を要するでしょう。
「期間入札の通知」が届いてからでは時間切れになるリスクが極めて高いため、この通知が届く前が実質的なタイムリミットと言えます。焦って安売りすることを避けるためにも、余裕を持ったスケジュール確保が重要です。
通知の受領後が専門家へ相談すべき最終タイミング
競売開始決定通知が届いた時点が、任意売却をスタートできる最後のタイミングです。これ以上先延ばしにすると、入札期日までに手続きが間に合わず、競売を回避できなくなりかねません。
一刻の猶予もないため、豊富な経験と知識を持ち、債権者との交渉をスピーディーに進められる専門家への早急な相談が不可欠です。
競売開始決定通知に関するよくある質問

競売開始決定通知を受け取った方が抱きやすい質問に回答します。
競売開始決定通知書とは何ですか?
債権者が競売を申し立て、裁判所が自宅を競売にかける手続きを開始したことを知らせる重要な通知書です。
届いた時点では所有権があり、すぐに家を追い出されるわけではありません。しかし、そのまま放置すれば自宅を強制的に売却され、退去を余儀なくされる危険な状態であると認識する必要があります。
競売開始決定から落札までの流れは?
競売開始決定通知が届いてから退去までの具体的なステップは、以下の通りです。
- 通知の到着
- 執行官による現況調査
- 入札期間の決定
- 開札・落札者の決定
- 代金の納付と強制退去
期間入札が始まると、任意売却への切り替えは時間的に厳しくなるでしょう。
競売開始決定通知後に相談して解決に至った事例
Tさんは、当初の返済額を抑えられる「ゆとり返済」を利用し自宅を購入しています。収入増加を見込んでの契約でしたが、思うように収入は増えず、ローンの支払額だけが急増。
支払いが追いつかなくなり滞納が続いてしまいます。裁判所から「競売開始決定通知」が届いた時に当協会へご相談いただきました。
当初、債権者は競売での解決を強く望んでいましたが、当協会の担当者が粘り強く交渉を重ね、任意売却への切り替えに同意してもらえました。約半年後に成約し、引越し期間の猶予を確保し、残ったローンも月々5,000円の分割返済で合意できた事例です。
現在は近隣の賃貸住宅で、精神的な重圧から解放された穏やかな生活を取り戻されています。
関連記事:ゆとり返済による滞納、競売通知受け任意売却で再スタートしたケース
競売開始決定通知が届いたらすぐに相談を
競売開始決定通知が届いても、すぐに家を失うわけではありません。しかし、強制的な売却が始まった合図であり、放置すればするほど状況は悪化し、解決の選択肢は狭まってしまいます。
大切な家と生活を守るためには、一刻も早い専門家への相談が不可欠です。一般社団法人全国任意売却協会では、専門家がご相談を承っております。
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