滞納なしの任意売却は認められる?難しい場合の解決策も解説
更新日 2025-12-23
「将来的な不安から、今のうちに自宅を売却したいがローン残高を完済できない」
「任意売却したいが、わざと滞納するしかないのだろうか」
住宅ローンの返済が今はできていても、将来の収入減や離婚などの事情により、早めに家を手放したいと考える方は少なくありません。しかし、滞納なしでの任意売却は、交渉の難易度が非常に高くなります。
この記事では、滞納がない状態で任意売却がなぜ原則不可なのか、その理由と例外的に認められるケースを解説します。そして、今のうちに取れる解決策について詳しく紹介しますので、参考にしてみてください。
滞納なしでの任意売却は原則として認められない
住宅ローンを滞納していない状態で「任意売却」を行うことは原則として認められません。ここでは、なぜ滞納がないと任意売却が難しいのか、詳しく解説します。
任意売却の必須条件は滞納ではなく、債権者全員の合意
「任意売却には滞納が必須」とよく言われますが、法律上の決まりではありません。最も重要な条件は、すべての債権者(金融機関)による合意です。借金が残る状態で抵当権を外してもらうには、銀行の許可が不可欠だからです。
つまり、銀行を含めた関係者全員が納得して合意さえすれば、滞納の有無に関わらず手続き自体は可能となります。ただし、通常は滞納という事実がなければ、交渉のテーブルに乗ってもらえないのが実情です。
売却代金でローンを完済できないなら、銀行は同意しない
銀行は融資したお金を回収し、利息を得ることで利益を出しています。返済が順調なら利益が確保できるため、銀行側にあえて『元本割れを認めてまで』現状を変えるメリットはありません。
売却代金で住宅ローンを全額返済できるなら問題ありませんが、完済できない場合は原則として認められません。ローン残高の不足分を自己資金で埋め合わせできない限り、銀行が担保物件である自宅の売却に同意する可能性は極めて低いと言えます。
完済できない担保解除は銀行にとってリスクと手間が大きい
銀行は住宅ローン契約の際に、自宅を担保にすることで、融資した金額が回収できなくなるリスクを抑えています。そのため、完済できない状態で売却を認めると担保がなくなり、残った借金は無担保状態となります。これでは銀行の回収できないリスクが上がってしまうのです。
さらに、担保解除や一部返済には複雑な内部手続きが必要となり、担当者の事務的な手間も増大します。差し押さえの危機など明確な理由がない限り、銀行にとってメリットがない以上、応じる可能性は低いでしょう。
滞納なしでも認められる2つの例外ケース
原則として難しいとされる滞納なしでの任意売却ですが、状況によっては交渉の余地があります。ここでは、例外的に金融機関が売却に応じる可能性が高い2つのケースについて解説します。
自己資金で完済できるなら「通常売却」として扱われる
売却価格だけではローン残高に届かなくても、不足分を貯金や親族からの援助などで用意できる場合は例外ケースです。銀行は融資残高を全額回収できるため、抵当権の抹消に応じない理由がありません。
この場合は「任意売却」ではなく、不足分を手出しして行う「通常売却」としての扱いになります。銀行側にとっても負担が少なく、最もスムーズかつ確実に自宅を売却できる方法と言えます。
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収入減や税金滞納など「返済不能の予測」がある場合
手出し金が用意できなくても、将来的な返済不能が確実視される状況であれば、滞納前でも交渉できる可能性があります。例えば、次のような状況です。
- 離婚による世帯年収の減少
- 病気・リストラでの収入減少
- 固定資産税や住民税などの税金滞納
特に税金滞納で役所による差し押さえが迫っている場合は、銀行が競売を避けるために応じるケースもあります。ただし、これらは高度な交渉が必要なため、専門機関への相談が不可欠です。
滞納していない今だからこそ選べる5つの解決策
実際に滞納してしまう前であれば、任意売却以外にも取れる選択肢はいくつか存在します。ここでは、今だからこそできる選択肢を5つ紹介しますので、自分の状況に合った解決策を選んでください。
支出を整理して家計の見直しを行う
まずは、すぐに取り掛かれる家計の改善から始めましょう。保険の見直しや通信費の削減など、固定費を削ることで月々の返済資金を捻出できるか再確認します。不用品の売却で一時的な資金を作るのも有効です。
小さな見直しでも、積み重なれば返済を継続できるケースもあるため、冷静に収支を洗い出すことが大切です。
銀行への返済条件変更(リスケジュール)
銀行に返済条件変更を相談して返済負担を軽減する方法です。元本返済を一時的に止めたり、月々の返済額を減らしたりしてもらえます。
ただし、これはあくまで一定期間の措置であり、ローン残高自体が減るわけではありません。期間終了後は通常の返済に戻るため、その間に家計を立て直す必要があります。急な収入減などの際に、影響が落ち着くまでの救済措置として有効です。
低金利ローンへの借り換え
現在よりも金利の低い金融機関へローンを借り換え、総返済額や月々の返済額を減らす方法です。成功すれば根本的な負担軽減になりますが、実現するには改めて審査に通る必要があります。
すでに物件価値よりもローン残高が多い「オーバーローン」の状態や、転職・減収などで属性が悪化している場合は、審査の通過が非常に厳しくなります。返済能力が下がってからでは選べない選択肢であるため、早めの判断が重要です。
売却後も住み続けられる「リースバック」
投資家などに自宅を売却し、その後は買主と賃貸契約を結んで住み続ける方法です。引っ越しの必要がなく、近所にも売却を知られない点がメリットですが、家賃が相場より割高になる傾向があります。
また、売却価格は安くなりがちで、オーバーローンの場合は売却後のローン残高を処理するために任意売却と併用することになります。資金計画を慎重に立てないと、家賃の支払いが新たな負担になりかねません。
リースバックについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
個人再生(住宅ローン特則)の利用
裁判所を通じて、カードローンなどの借金を大幅に減額してもらう手続きです。「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅ローン以外の借金を整理しつつ、自宅を手放さずに済みます。
住宅ローン自体の減額はできませんが、その他の返済負担が軽くなることで、家のローンを払い続けられるようになります。手続きには専門的な知識が必要ですが、多重債務で苦しんでいる場合には強力な解決策です。
住宅ローン返済中の個人再生は、以下の記事で解説しています。
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任意売却のために「わざと滞納」するリスク
意図的な滞納は、任意売却を利用するための手段にとどまらず、売却後の生活に深刻なペナルティが生じることになります。ここでは、滞納が引き起こす具体的な3つのリスクについて理解しておきましょう。
信用情報(ブラックリスト)に傷がつく
数ヶ月の滞納で個人信用情報機関に事故情報が登録されブラックリストに入る可能性があります。この状態になると、完済後も一定期間はクレジットカードの作成や自動車ローンの借り入れ、携帯電話端末の分割払いなどが利用できなくなるでしょう。
将来のライフプランに大きな制限がかかるため、安易な滞納は長期にわたって生活に悪影響を及ぼしかねません。日常生活に支障がでてしまう可能性があることを認識しておくことが重要です。
期限の利益を喪失し、残額の一括返済を求められる
滞納を放置すると、分割で支払う権利である期限の利益を喪失します。銀行からローン残高の一括返済を求められますが、滞納している状況では支払える可能性は低いでしょう。その結果、保証会社が銀行へ代位弁済を行い、最終的には競売手続きへと移行してしまいます。
その結果、競売では市場価格の5〜6割程度で強制的に売却される可能性が高く、多額の借金が残りかねません。
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連帯保証人に請求がいき、多大な迷惑がかかる
連帯保証人がいる場合、債務者が期限の利益を喪失した時点で、保証人にも残債の一括請求がいきます。事前に相談なく滞納すると、連帯保証人にとって想定していない高額な請求が届けば、信頼関係は崩れてしまうでしょう。
保証人の自宅や給与が差し押さえられるリスクもあり、深刻なトラブルに発展しかねません。連帯保証人など自分以外を巻き込む状況では、独断で「わざと滞納する」選択は避けるべきです。
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滞納前から早期に行動する3つのメリット
滞納してから動き出すのと、滞納する前の段階で相談するのとでは、選べる解決策の幅が大きく異なります。余裕があるうちに動くことには大きな利点があります。早期に行動することで得られる具体的なメリットは、次の3つです。
- 金融機関や専門家への相談に時間的な余裕がある
- 信用情報に傷がつかない解決策を選べる可能性がある
- 競売を回避できる
それぞれの内容を見ていきましょう。
金融機関や専門家への相談に時間的な余裕がある
競売の手続きが始まってからでは、時間切れで任意売却が間に合わないケースも少なくありません。しかし、滞納前の今なら、通常売却やリースバックなど、複数の選択肢を比較検討する十分な時間が確保できます。
焦って不利な条件で契約することなく、専門家とじっくり相談しながら、最も有利な条件を引き出すための準備期間を持てる点は大きな強みです。精神的なゆとりを持って、最善の決断を下すことができます。
信用情報に傷がつかない解決策を選べる可能性がある
専門家への早期相談が、「ブラックリスト入り」の回避につながります。親族間売買やリースバック、銀行との交渉次第では、信用情報を守りながら住宅ローンを整理できる道が残されているからです。
一度滞納して信用情報に傷がつくと、生活再建に大きな支障が出ます。社会的信用を維持したまま解決できる機会を逃さず対応するには、滞納していない今の段階だけだと言えるでしょう。
競売を回避できる
早めに任意売却の方針を決断することで、競売という最悪の事態を回避できます。万が一、今後滞納してしまっても、早い段階から準備して交渉を始めていれば、競売の手続きが完了する前に解決できる可能性が高いためです。
何もしなければ市場価格の6割程度で売却されてしまいますが、任意売却であれば競売より高く売れる可能性が高く、売却後の残債も抑えられます。
滞納なしの任意売却についてよくある質問
滞納なしでの任意売却に関して寄せられる疑問について回答します。
任意売却は住宅ローンを何ヶ月滞納するとできるようになりますか?
具体的な期間の決まりはありませんが、一般的には3ヶ月から6ヶ月滞納すると、銀行から任意売却を提案されるケースが多くあります。
滞納期間が長引くほど交渉条件も厳しくなるため、「滞納してから」ではなく、支払いが苦しいと感じた時点での相談が最も効果的です。
任意売却をすると、信用情報には必ず登録されますか?
任意売却をしたことだけで信用情報に登録されるわけではありません。主に登録される原因と掲載されないケースを表にまとめました。
| 信用情報に登録される | 信用情報に登録されない |
|---|---|
| ・任意売却に至るまでの住宅ローン滞納 ・保証会社による代位弁済の事実 |
売却金と自己資金でローンを完済できた場合 |
このように、銀行取引で金融事故と判断される事案が登録されます。
任意売却後もローンが残った場合、残債の支払いはどうなりますか?
自宅を売却してもローンが残る場合、返済義務は免除されません。しかし、任意売却では、現実的に支払える範囲での分割払いを認められるケースが一般的です。
滞納なしの今こそ早めにご相談を
滞納なしでの任意売却は銀行の合意を得るのが難しく、交渉の難易度が高い手続きです。しかし、離婚やリストラなど、将来的な返済不能が明らかな事情があれば、例外的に認められる可能性は残されています。
大切なポイントは、「まだ滞納していないから」と問題を先送りしないことです。滞納前であれば、信用情報を守りながら解決できる選択肢が豊富にあります。
一般社団法人全国任意売却協会では、実績のある専門家が在籍しており、最適な解決策を提案できます。まずは一度、お気軽に現状をご相談ください。
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