養育費と住宅ローンの相殺は可能?離婚後に払えず破綻する前の対策を紹介
更新日 2026-02-20
「養育費と住宅ローンの両方を支払うのは限界だ」「ローンを払う代わりに養育費を相殺できないか」と、離婚後の二重払いに悩む方は少なくありません。毎月の出費が膨らむため、そのように考えるのは自然なことでしょう。
法的な相殺は原則認められませんが、合意があれば実質的な相殺は可能です。ただし、自己判断での誤った取り決めは、金融機関との契約違反や将来的な生活破綻を招きかねません。
本記事では、養育費と住宅ローンに関する正しいルールとリスク回避策を解説します。養育費と住宅ローンの支払いに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
養育費は住宅ローンを理由に相殺できる?原則と例外
「自分が家を出てローンを払い続ける場合、養育費は減らせないのか」と、疑問を持つ方は多いでしょう。
ここでは、養育費と住宅ローンの関係性について、法的な原則と実務上で認められる例外的な扱いを解説します。
【原則】法律上、養育費と住宅ローンは「別物」であり相殺できない
法律上、養育費と住宅ローンは全くの「別物」であり、一方的な相殺はできません。養育費は子どもの生活を維持するための資金である一方、住宅ローンは親個人の資産形成に伴う借金だからです。
養育費を払う側が住宅ローンを返済していることは、あくまで資産への出費にすぎません。借金返済を優先して子どもの生活費を削ることは、正当な理由として法的に認められないのが原則です。
【例外】合意があれば「住居費」とみなして事実上の相殺ができる
例外として、事実上相殺できるケースは、養育費を支払いつつ「元配偶者と子どもが住み続ける家」の住宅ローンを支払う場合になります。
この場合、住宅ローンの支払いが「養育費に含まれる住居費」の肩代わりとみなされるからです。
実務では、養育費算定表の金額から住居費相当額を差し引いて合意するケースが一般的です。ただし、これは自動的に適用されるものではなく、双方が納得したうえで明確に取り決める必要があります。
養育費と住宅ローン、二重の負担が招く3つのリスク
養育費と住宅ローンを同時に支払い続けることは、想像以上に経済的負担を強いられる状態です。
ここでは、二重払いが引き起こす典型的な3つのリスクについて解説します。
リスク1:自身の生活費・養育費・ローンの支払いで家計が破綻する
最も現実的なリスクは、支払う側の家計が破綻するケースです。自身の家賃や生活費に加え、養育費と住宅ローンの支払いが重なれば、手元に残るお金は極端に少なくなります。
無理な支払いが続くと、わずかな出費増で生活苦に陥り、滞納へつながりかねません。相場より高い養育費や過大なローン負担は、支払う側の生活維持を困難にするため、現実的な計画を立てましょう。
リスク2:金融機関との契約違反で「一括返済」を迫られる
住宅ローンは原則として「名義人とその家族が居住すること」を条件に融資されるため、別居は契約違反とみなされるリスクがあります。結果として、残債の一括返済を求められかねません。
名義変更や元配偶者による借換は、改めて審査が必要となり、返済能力次第では融資が厳しくなるでしょう。契約違反の状態を解消できないまま時間が経過すると、最悪の場合は競売へつながり、住居を失う可能性があります。
リスク3:病気・減収・再婚などに対応できず、競売や自己破産に追い込まれる
長い返済期間中には、病気や減収、自身の再婚といった変化が起こり得ます。しかし、個人的な状況が変わっても、住宅ローンの支払いは待ってくれません。
住宅ローンの滞納が続けば、自宅は差し押さえられ、競売によって強制的に売却されてしまいます。住んでいる妻子が強制退去を余儀なくされるだけでなく、名義人自身も自己破産に追い込まれるなど、共倒れになるリスクがあるのです。
離婚時のマイホーム、どうするのが正解?3つの選択肢
離婚が決まった際の対処法は、次の3つです。
- 住宅ローンの名義人が住み続ける
- 住宅ローンの借り換えを検討する
- 住宅を売却して清算する
それぞれの注意点とともに解説します。
住宅ローンの名義人が住み続ける
最もシンプルな方法は、住宅ローンの名義人がそのまま家に住み続け、支払いも継続するパターンです。契約者が居住するため、金融機関との契約違反になる心配がありません。
このケースでは元配偶者と子どもは住宅ローンの購入物件と別居になるため、住宅ローン支払いを養育費と相殺する根拠がありません。したがって、名義人はローンと養育費の二重払いとなります。
住宅ローンの借り換えをする
名義人ではない元配偶者と子どもが住み続ける場合、改めて単独名義で住宅ローンを借り換える方法があります。名義と居住者が一致するため、将来的なトラブルを未然に防げるのが大きなメリットです。
しかし、借り換えの審査は新規借入と同様に行われます。元配偶者自身に十分な年収や勤続年数がないと、審査を通過するのは容易ではありません。
また、家の所有権移転や贈与税の問題も絡むため、離婚協議書などで権利関係を明確にしておく必要があります。
住宅を売却して清算する
将来のリスクを断ち切るなら、自宅を売却してローンを完済し、残金を分ける方法が安全です。住宅ローンの支払い義務や連帯保証人の問題もすべて解消されます。
家の売却額がローン残高を上回る「アンダーローン」の状態であれば、手元に残った現金を財産分与として公平に分けられます。新生活の資金も確保できるため、互いにわだかまりを残さず再スタートを切るのに適した選択肢といえるでしょう。
家の価値よりローン残高が多い「オーバーローン」の場合にできること
家の売却額が住宅ローン残高を下回る「オーバーローン」の状態では、原則として抵当権を抹消できないため、通常の売却が困難です。
オーバーローンでも借金を整理し、生活を立て直すために有効な2つの解決策について見ていきましょう。
借金が残っていても売却できる「任意売却」を活用する
住宅ローンの返済が苦しい場合、金融機関など関係者すべての合意を得て売却する「任意売却」があります。
任意売却は競売で自宅を売却するよりメリットがあります。主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格の7〜8割 | 市場価格の5〜6割 |
| 残債の支払い | 生活状況に合わせた返済計画を交渉可能 | 交渉の余地なし |
| プライバシー | 近隣に事情を知られない | 物件情報が公開され、プライバシーが保護されない |
競売を回避するため、任意売却は早い段階からの相談が欠かせません。検討する際には、金融機関や専門家へ相談しましょう。
どうしても住み続けたい場合は「リースバック」を活用する
「子供の学校を変えたくない」など、今の家に住み続けたい場合は「リースバック」が有効です。自宅を売却した後、購入者と賃貸契約して住み続ける仕組みです。
自宅は手放しますが、引っ越しの手間や費用がかからず、これまで通りの生活環境を維持できます。将来的に資金的な余裕ができれば、家を買い戻せる可能性がある点もメリットといえるでしょう。
離婚後、養育費・住宅ローンで揉めないための対策4選
養育費と住宅ローンで揉めないために、離婚時あるいは離婚直後にやっておくべき4つの対策があります。
- 公正証書を作成する
- 連帯保証人・連帯債務を解消しておく
- 不動産査定を行い「家の現在価値」を正確に把握する
- 専門家へ相談する
それぞれの内容を見ていきましょう。
公正証書を作成する
滞納時の強制力を行使するため、公証役場にて「公正証書」を作成しておくことが効果的です。未払い時に給与差し押さえなどの強制執行が可能になります。
公正証書を作成する際には、合意内容に「住宅ローン全額を養育費の一部として負担する」といった具体的な文言を盛り込みましょう。言った言わないの水掛け論を防止できます。
連帯保証人・連帯債務を解消しておく
離婚を理由に連帯保証人や連帯債務者の責任は、自動的に消えません。家を売却する際に元配偶者の同意が不可欠となり、自身の判断だけで家を手放すことができなくなります。
売却するタイミングを逃さないように事前の対応が欠かせません。借り換えや単独債務への変更交渉を行い、離婚時に金銭的な関係を清算しておくことが重要です。
不動産査定を行い「家の現在価値」を正確に把握する
自宅を「売る」か「住み続ける」か、どちらが最善かを判断するためには、正確な資産価値を知る必要があります。不動産会社に査定を依頼し、家がいくらで売れるのかを確認しましょう。
ローン残高よりも高く売れるのか、逆に借金が残るのかによって、対処法が変わるからです。複数の業者に査定を出して適正な市場価格を把握できることが、冷静な判断につながります。
専門家へ相談する
養育費の計算や住宅ローンに関する銀行との交渉は専門知識が必要であり、当事者だけで解決しようとすると時間がかかります。複雑な権利関係の整理は弁護士に、売却やローンの悩みは、専門家や不動産会社への相談がおすすめです。
特に任意売却は、より専門的な知識と経験が重要になるため、実績のある専門家や不動産会社への相談が重要です。個別の事情に応じた最適な解決策を提案してくれるでしょう。
養育費と住宅ローンに関するよくある質問
実際に養育費と住宅ローンに関して、よくある質問の中から重要なポイントを厳選して回答します。
養育費と住宅ローンを相殺するときの注意点は?
最大の注意点は、口約束だけで済ませず、公正証書などで書面化しておくことです。もし書面に残していなければ、「養育費が未払いである」と後から訴えられた際に不利になります。住宅ローンの支払いを養育費として証明できず、二重払いとなるリスクがあるのです。
また、名義人の転居という金融機関との契約違反による一括返済リスクについても、責任の所在を明確にしておく必要があります。曖昧な取り決めは、将来のリスクとなるため注意が必要です。
住宅ローンと養育費、両方を払う場合の一般的な相場や計算方法は?
決まった計算式はありませんが、養育費算定表の基準額から、住宅ローンの返済相当額を差し引いて決定するのが一般的です。または、支払う側の年収からローンの年間返済額を控除して算定の基礎とする方法もあります。
いずれにせよ、双方が納得できる金額の設定が重要です。
参考:法務省「養育費」
養育費の代わりに住宅ローンを元夫が支払うと母子手当は減額される?
減額される可能性があります。元夫から支払われる住宅ローンが「実質的な養育費」とみなされた場合、受け取る側の所得として計算されるためです。
児童扶養手当(母子手当)には所得制限があるため、受給額が減ったり、支給が停止されたりするケースも考えられます。事前に自治体の窓口へ確認しましょう。
離婚後の住宅ローンと養育費の支払負担を軽減した事例
当協会への相談を通じて、離婚後に多重債務で身動きが取れなくなっていた状態から、生活を立て直したK様の事例を紹介します。
離婚後、妻子居住の自宅ローンと自身の家賃・養育費の三重払いに陥ったK様。元奥様が連帯債務者のため、競売になれば元奥様にも請求が及ぶ複雑な状況でした。
第三者である当協会が間に入り、元奥様へ競売リスクと任意売却のメリットを丁寧に説明。引越し時期もできるだけ長く住めるようにし、お子さまが転校しない住まいへの変更ができました。
結果、自宅は1,980万円で成約。残債はK様が一本化して引き受け、無理のない分割返済へ移行できるように今後もサポートしていきます。
関連記事:離婚後の住宅ローンと養育費負担、任意売却で負担軽減したケース
まとめ:養育費と住宅ローンの二重払いで悩む前にまずは相談を
法的な原則として、住宅ローンと養育費の相殺は認められません。しかし、双方が納得して合意すれば、事実上の相殺としての運用は可能です。
ただし、安易な口約束や自己判断での相殺は金融機関との契約違反になり、競売による強制退去といったリスクにつながります。トラブルを未然に防ぐため、公正証書の作成や専門家への相談が欠かせません。
もし、養育費と住宅ローンの二重払いにより悩んでいる方は、滞納してしまう前に、ぜひ当協会にご相談ください。実績ある専門家が任意売却やリースバックなど、あなたの状況に合わせた最適な解決策を提案します。
ご相談は全国から無料で受付中!
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